邑南町の観光名所、歴史の紹介
ここでは、島根県邑南町内にある歴史スポットや観光名所などを紹介しています。
NHK特集『寺が消える』その後……(聞光寺編)
昭和63年(1988)、NHK全国放送にて『NHK特集・寺が消える』という特集番組がありました。
舞台は島根県邑智郡の川本町を中心とした周辺の寺院状況をレポートしたもので、急激な過疎化による門徒数の減少により寺院経営が成り立たず、廃寺が後を絶たないという内容のものでした。
NHK特集『寺が消える』
主に川本町の状況
当時の島根県西部の寺院状況
昭和63年のNHKの調べによると、石見地域3郡の中で、寺院登録されているものが239ケ寺。その中、無住寺院(住職が不在の寺院)が48ケ寺、更に荒れ寺となっているのが29ケ寺という、悲惨な状況。
特に川本町が酷く、おそらく平成に入ってからは、更に状況は進行していることでしょう。
この地域は仏教宗派の中でも浄土真宗の割合が非常に高く、番組でも扱っているのは浄土真宗本願寺派の寺院でした。
番組中、いくつかの寺が取材を受けているのですが、その中で川本町小谷の「聞光寺」は……
聞光寺を訪れる浄土真宗調査委員の方々
聞光寺本堂
本堂の屋根は落ちていました
もう寺としての機能を果たしていません
廃墟同然ですが、本山の寺院台帳では、立派な一軒の寺。開基は元文四年(1739)という歴史のある寺です。
聞光寺住職は30年前、生活苦と子供の教育を理由に、この地を離れて大阪へ移り住みました。
その住職・高橋さんは取材時には病床にあり、「住職ではあるが、一人の親でもある。子供を育てる為にも、寺を捨てて都会に出たのは仕方がなかった」と涙ながらに語る姿が何ともいえませんでした。
代わりに住職の遠縁にあたる高良さんという方が、本尊などを隣の庫裏にて守っていることを番組では紹介していました。高良さんは僧侶の資格がないため、法要などは全く行われていませんでした。
高良さんと、仏像など寺院道具一式
さて、この聞光寺は、番組で紹介された後、どうなってしまったのでしょう。
27年の歳月を経て、訪問してみました。
平成26年の聞光寺跡地
本堂があった場所は、既に何も存在しません
朽ちた材木が、少しだけ残されていました
高良さんが住んでいた庫裏
当然ながら、この庫裏は誰も住む人がなく、鍵がかけられて入れない状態でした。
地元の人に聞いたところ、高良さんは既に亡くなっておられ、守っていた本尊などの行き先は不明。おそらく合併吸収した寺院か本山に預けられたのでしょう。
この建物が朽ちて消えて行くのも、時間の問題なのでしょう。
聞光寺のある集落
聞光寺のあった集落は、山間の小さな村で、確かにこの僅かな世帯数で一寺院を運営していくことは非常に困難なことなのでしょう。
小さな村とはいえ、かつては寺院を建立するほどの賑わいがあり、浄土真宗の教えを求めた活気があったかと思うと、急激な過疎の流れに、何やら悔しい思いがしてなりません。
さて、続いて番組中で紹介された、川本町市井原の「明善寺」について紹介しましょう。
(2014年4月:テレビ画像はNHKより)
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