戦国の石見を探る……邑南町の城跡や史跡を紹介

島根県邑南町(旧 石見町、瑞穂町、羽須美村)の城跡や史跡・遺跡を紹介しています  

邑南町の歴史的観光名所

 ここでは、島根県邑南町内にある歴史スポットや観光名所などを紹介しています。

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◆安来・和鋼博物館のメイン展示は邑南町産「天秤ふいご」と「鉄滓」

 2017年に上映された『たたら侍』では、奥出雲を舞台にたたら製鉄をめぐる争いが描かれ話題を呼びました。実際にセットにてたたらを操業するという本格的な撮影がなされ、その迫力ある映像美に震えた人も多かったでしょう。
 また、宮崎駿監督のアニメ映画『もののけ姫』でもたたら場が登場し、そのモデルは奥出雲のたたらだと言われます。これだけ取り上げられながらも、どうも盛り上がりに欠けるのは、「たたら」の持つイメージが実に地味だからなのだとは思います。

 ともあれ、中国山地は古来「たたら製鉄」が盛んでした。この地域は良質な砂鉄が採取でき、江戸時代後半には、国内の鉄総生産量の約80パーセントを占めていたと言われます。
 前述のとおり「たたら」の中心は「出雲」と思われがちですが、歴史を紐解くと、出雲国よりもむしろ石見国の方がたたら製鉄がさかんであったとも言えるのです。事実、戦国から江戸にかけて、鉄生産量は出雲よりも石見の方が多かったと指摘する声もあり、邑南町を中心に邑智郡の各地にたたら場の跡が数多く残されています。

 そのたたら製鉄の文化を伝える「和鋼博物館」が安来市に存在するのですが、そのメイン展示が邑南町のものなので、ご紹介しましょう。

和鋼博物館
天秤ふいご

 これは、たたら製鉄には欠かせない送風装置「天秤ふいご」。展示室の真ん中にドーンと構えているので存在感が半端ないのですが、現存するものは国内でも3、4基しかないと言われ、特にこれは邑南町若杉(瑞穂地区)で実際に使用されていたもの。国の重要有形民俗文化財に指定されています。
(ここに掲載されている和鋼美術館展示の写真は、博物館から正式に許可を受けて撮影しています。他へ使用することはご遠慮ください)

天秤ふいご
 圧倒的存在感

天秤吹子
かなりの高さがあり、迫力満点です

送風部分
炉との接続部分


足踏み部分

 天秤ふいごとは、たたら製鉄で炉の中に空気を送るための装置で、江戸時代初期にこの天秤ふいごが発明されたことにより、携わる人員も省力化され、また送風能力のアップで製鉄効率は飛躍的に向上したと言われます。

 この若杉の天秤ふいごを寄贈したのは、矢上の三宅氏で、実際にたたら製鉄業を営む家系だったようです。『石見町誌』には、その三宅氏から聞き取ったたたら製鉄方法や提供された資料が詳しく掲載されています。

 ちなみに博物館入口にもう1基、鳥取県日南町で使用されていたものがあり、これは現在でも踏んで体験することができます。結構、力がいりますよ。轟々と燃え盛る炉の隣で懸命に踏み続けねばならないのですから、かなりの重労働だったことでしょう。記録では、1時間踏み続けて2時間休むの交代制。ふいごを踏む人を「番子」といい、ここから「かわりばんこ」という言葉が

体験できる天秤鞴
天秤ふいご体験コーナー

 更に、博物館の方によると、最近の展示のメインは「古墳時代の鉄滓」だそうです。

今佐屋山遺跡模型
古墳時代の鉄滓と遺跡模型

 実はこれ、邑南町市木の今佐屋山遺跡から出土されたもの。1989年、浜田自動車道の瑞穂インター建設のために行われた発掘調査によって見つかった大発見なのだそうです。

鉄滓
今佐屋山遺跡出土の鉄滓

製鉄模型
遺跡から推測された製鉄作業の模型
初歩的な「皮ふいご」で炉内に送風していますね。

 瑞穂インターを通る時に、気づいておられました?この重要遺跡の存在を。
『出雲風土記』などには、八世紀前半の鉄産業について記されていますが、今佐屋山遺跡は六世紀後半・古墳時代後期の集落と製鉄遺跡。これは島根県内最古のもので、国内でも検出例が少ない貴重な遺構です。鉄滓は製鉄時に出る不純物ではありますが、これにより当時の技術レベルを知ることができますので、大変貴重なものなのです。

瑞穂インター
瑞穂インターの脇に遺跡が

今佐屋山遺跡
今佐屋山遺跡

案内板
発掘の様子が詳しく紹介されています

 古墳時代に加えて平安時代の製鉄炉跡も並んで出土した重要な遺跡のため、インター建設による破壊は免れ、盛り土をして保存という形が取られています。住居跡の大きさも、植木によって表されています。

 安来の和鋼博物館では、この鉄滓や天秤ふいごの他にも、邑南町で実際に使用されていた様々なたたら道具が前述の三宅氏により寄贈され、展示されています。
 近くまで来たら、ぜひ立ち寄ってみてください。

 

参考文献: 和鋼博物館案内パンフレット/「主要地方道浜田八重可部線特殊改良工事に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書」(1991島根県教育委員会)

(撮影は2017年9月:ここに掲載されている和鋼美術館展示の写真は、博物館から正式に許可を受けて撮影しています。他へ使用することは禁じます

 

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